その日フライト予定だった他チームと共に離陸地を加西市鴨谷町に選定し、離陸地までみんなで移動した。機体立ち上げ後、風が強いと感じたので、前日よりクルー派遣をお願いしていたチーム員にP2として搭乗してもらった。離陸する前に他の気球が離陸しており、周囲からの「上空へ行けば風は穏やかになる」などの助言をうけて離陸した。加西市鴨谷町から高度100〜150m程度で鶉野方面に飛行中、上空風・地上風ともに速いことに気づいたので速やかに着陸できるよう着陸地を探した。 中野町集落と万願寺川を越えた休耕田で着陸することも考えたが、万願寺川手前の集落周辺のセンシティブエリアをクリアするため一度高度を上げてアプローチするとした場合、失敗したら進行方向側にあるPZ(自衛隊、150m以上)に突入する危険があると考えられた。 そのため、加西市中野町の集落手前の休耕田を着陸地として選定。自然降下でアプローチを開始した。着陸指示を搭乗者に説明後、農地の手前の電柱(目測12m)の上を通過し、安全通過確認後、左パイロットを消火しリップラインを引き着陸体勢に入った。このとき、右手でバーナー、左手でリップラインを持ち、P2にもリップラインを引いてもらっていた。ブレーキとしてバーナーを焚く量が足りなかったのか、リップラインを引き過ぎたのか、着陸予定の水路を越えた先の休田ではなく水路手前の田に接地した。接地直前までバーナーを焚いており、右パイロットを消火する前に接地してしまった。1度バウンドしている際に右パイロットを消火し、リップラインを両手で持つ前に、風にあおられ前方にあった水路(幅約2m)の壁にバスケット部分が衝突し、そのままバスケット部分が落下。20m程水路中で引きずられ停止した。(この状況について別途資料に図示の通り) 水路に落下時の衝撃で搭乗者一名がバスケット内に倒れ込んでシリンダーに左肩をぶつけ左鎖骨を骨折。P1は水路に落下時、水路の壁に右手をついて右手甲を挫創。その他二名の搭乗者は無傷。負傷者二名は二人とも歩けたが消防本部に救急手配を行った。 |
機体立ち上げ後、風が強いと感じたが、トレーニング期間を含め加西で6時間程度フライト経験があったこと、同日、同じ離陸地から3機離陸していたこと、P2に搭乗してもらっていること等を踏まえ初心者にも関わらず離陸してしまった。また、着陸時のリップ操作の不手際や着陸地選定の判断が甘かった点などパイロットとして技術・判断力が未熟だった。今後は自分の技量を踏まえて安全なフライトを心掛けたい。 |
当日は冬型の気圧配置でもあり、上空に速い風(4〜5m)も確認されていたのであれば、P1経験が浅いこと(約1時間)も考慮し、フライト可否の判断はもっと慎重にした方が良かったのではないでしょうか。 そのような中、パイロット資格者をP2につけたのは良い判断だと考えられますが、そのP2のリップ操作が水路手前の予期せぬ着陸を招いている可能性もあります。P2の選任にも慎重さが求められるでしょう。あるいは、経験豊富なP2であれば、着陸操作そのものをP2の方に代わってもらう選択肢もあり得たかとも考えられます。 最終的には着陸操作が水路への落下を招いています。特に風が速い時には、的確かつ迅速な操作が次々に求められてきます。
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