JOYフライトを目的として飛行。始めに嘉瀬川河川敷から河川敷に戻るフライトプランで別のパイロットが飛行、河川敷着陸。その後当該パイロットと交代し、同様に河川敷に戻るフライトプランで、8:31離陸。中間層の南東風と高層の北西風を利用し1度周回した後、再度周回するため中間層の南東風を利用。途中、残量の少なくなったボンベから未使用のボンベに切り替えた。その後上昇、北西風に乗り、約3000ftを時速約20km、10分飛行後、1000ftまで高度を下げるため、約800ft/minの速度で降下。1度目の降下時に降下した際もメインバーナーで約400ftで機体が停止したため、1600ftからメインバーナーを焚くが1000ftになっても停止せず、民家屋根の瓦とトタン屋根サッシに接触、接触場所及び軒を損傷。接触後の反動で配電BOX損傷後、隣家の壁を擦った後浮上。住宅地のためその場では着陸場所がなく、最終的に佐賀市鍋島町鍋島にて着陸。 |
住宅密集地にもかかわらず急降下したこと、およびバーナーの熱量が低下していることに気付かずメインバーナーを焚き続けたことが直接の事故原因と思われる。事故翌日、バーナーの燃焼実験を行った。メインバーナーを焚き続けてしばらくすると、赤い炎が見えなくなり、青白く細い炎に変化、長さも焚き始めより短くなった。事故時も同様な状態が生じていたものと思われる。サイレントにすると赤い炎が出たが、時々青白い炎が混じる。輻射により感じる熱量もサイレントの方が多かった。1分程度バーナーを休ませた後メインバーナーを焚くと火力の回復が見られた。事故当日は気温が大変低く、ガス圧も低かったため、降下の際メインバーナーを焚き続けた結果、炎が短くなり、気球の天頂付近まで熱気が届かず、機体の降下を停止できなかったものと思われる。メインバーナーで炎が弱くなった際でもサイレントバーナーは比較的健全に機能することを実験の結果確認しており、降下が停止しないと思った際にメインを両方焚くという選択ではなく、サイレントを焚くという判断ができれば衝突は回避できた可能性が高かったと思われた。今後は、低温下におけるボンベの管理に特に気を配り、ガス圧の低下による炎の出量の低下を抑えるなどの措置を行う必要がある。 |
今回の事故は当日の冷え込みにより、ガス圧が4kg弱の中、3000ftから800ft/mにて降下することにより、さらに球皮内の温度の低下を招き、バーナーを焚き続けたにも拘らず降下を止めることができないまま、民家の屋根に接触する事故を起こしてしまっている。 パイロットの聞き取りの中で普段だったら1000ftもあれば十分降下を止められたと語っていましたが、当日の冷え込みによるバーナーのガス圧不足、シングルバーナーであったことを考慮すれば、徐々に降下を下げていくことにより、事故は避けられたのではと思われる。民家密集地にも拘らず降下速度800ft/mの降下は思慮不足だったと言わざるを得ない。 九州でも冬場は0度以下に温度が下がる場合もあり、ガス圧管理が重要であり、メーカーのマニュアルに添った適正なガス圧を把握しておくことが大切である。 窒素によりガス圧を上げる場合はフライト当日の外気温を充分把握し、フライト当日に加圧することが望ましい。 CAMERONのMk4やShadowなどは、”燃料系統が2つあるシングルバーナー”である。 慌てて両方のブラストバルブを同時に開いても、電池の並列つなぎと同じ理屈で、出力は増えない。 緊急時には、片方のブラストバルブと、もう一方のクルーズバルブを開くことによって初めて、ダブルに近い出力が得られることを、理解、実践しておくべきである。
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